今年のイタリア映画祭では、戦争、家父長制、いじめ、抗えない運命といった社会問題をテーマにした作品に、日本との共通点を感じました。
以前は「イタリアってこんな国なんだ!」と驚くことが多かったのですが、今回は感情的な距離が縮まったように感じました。これは私の加齢のせいかもしれませんが…。
🎟️ 座席の覚書
なんだか毎回学習しない私。有楽町朝日ホールでの座席について。
来年のために、座席はG列以降の10番または23番が見やすいことを記しておきます。段差がない席が多く、前に大きな人がいると画面が見えづらくなるので。
2025年イタリア映画祭
5月1日開幕でした。
🏆 勝手にランキング
以下は、私の主観によるランキングです。基準は、見終わった後の充実感です。誰の参考にもならないランキングとなり恐縮でございます(笑)
1位:Romeo è Giulietta(ロミオはジュリエット)
とにかく笑って、楽しくて、スカッとした!
『イタリア的、恋愛マニュアル』などで知られるジョバンニ・ヴェロネージ監督の作品。さすがの安定感とテンポの良さで、とても観やすい映画でした。
物語は、ジュリエット役に選ばれなかった女優が、腹いせに男装してロミオ役のオーディションを受けたところ絶賛されてしまい……という展開。舞台演出家役のセルジョ・カステリットさんが放つ毒舌も最高。「ここに民主主義なんてない!俺が王だ!」などのセリフが可笑しくて、場内爆笑。日本公開されたら、ぜひもう一度観たいです!
2位:Campo di battaglia(戦場)
戦争に行きたくないがために自傷行為や精神病のふりをする人々を描いた作品。
戦場の映像はありませんが、病院でのやりとりから戦争に駆り出される切実さが伝わってきました。全員が行かなければ戦争は実行できないのに、なぜ戦争が進んでいくのか・・・という疑問が浮かびました。
3位:Diva futura(ディーヴァ・フトゥーラ)
イタリア初のポルノ映画制作会社「ディーヴァ・フトゥーラ」の秘書の自伝を基にした作品。ポルノを芸術として扱っていた社長リッカルド・スキッキの姿勢が描かれています。スキッキが芸術と信じた好きなものを、ただの欲求を満たすだけの暴力的な表現で扱われたエピソードの数々。悔しさや悲しさが伝わりました。
また、私も記憶にあるイタリアでポルノ大女優が政治家になったニュースを日本で見た記憶があったので懐かしくも思いました。
女優であるジュリア・ルイーズ・スタイガーウォルトが監督を務めており、彼女の視点が作品に反映されているように感じました。力強く、世界へ向けて希望の見える何かが伝わった思いです。
4位:Iddu(シシリアン・レターズ)
シチリアの方言で「彼」を意味する「Iddu」がタイトルのこの作品は、2023年に起きたマフィアのボス、マッテオ・メッシーナ・デナーロの逮捕の実話を基にしています。監督のファビオ・グラッサドニアとアントニオ・ピアッツァはパレルモ出身で、マフィア闘争の真っ只中で育った経験が作品に反映されています。ギリシャ神話のような要素を巧みに織り込んだ意欲作。
上映後の監督のトークで、これは彼らにしか表現できない映画なのだと思いました。現地で肌で感じたものを、私たちに伝えてくれたのだと。。。
また、いつもトークの質疑応答で感心させられるのは、日本の観客の質問や感想の素晴らしさ。今回もこの映画についてある女性が「まるで神話のようだ」と表現されていて、監督たちもまさにそのように作ったとおっしゃっていたのが印象的でした。
5位:Familia(ファミリア)
父親の暴力に苦しめられた母親と息子2人の人生を描いた実話に基づく作品。最終的に父親を殺してしまう息子の姿が描かれています。法が整備されていない時期の非情さも浮き彫りになっていました。監督フランチェスコ・コスタービレさんの社会への問題意識が伝わってきました。
6位:Il ragazzo dai pantaloni rosa(ピンクのパンツを履いた少年)
自殺してしまった息子のいじめを、母親が出版した本に基づく実話。
嫉妬、SNS中傷、いじめといった現代の大きな問題が描かれています。女性監督マルゲリータ・フェッリさんの世代感と、そしてしっかり伝えなければという使命感までもが作品に反映されているように感じました。
最後に流れる自殺してしまった少年の笑顔の写真が、とてもつらかった。
同時に、描かれなかった人々の心情も想像したいと思った。とても辛い。
7位:La vita accanto(隣り合わせの人生)
顔に大きなあざを持って生まれた少女が、ピアニストとして成長していくストーリー。監督マルコ・トゥッリオ・ジョルダーナは、全演奏シーンを役者自身で行うことにこだわった点が興味深かったですし、役者さんたちの演奏も演技も素晴らしかったです。
8位:Vermiglio(ヴェルミリオ)
第二次世界大戦中のヴァルミリオという村での話。
脱走したシチリア兵が村の若者を背負い村に現れ、恩人として迎えられます。村娘と恋に落ち子供ができるが、戦後にシチリアに帰還した彼は戻ってこない。実は彼には妻がいて、重婚を知ったその妻に殺されてしまう。静かでほとんど語らない娘だが芯が強い女性、頑固で臆病な家長の父親、息苦しかったであろう時代背景が伝わる作品。映像も美しい。寒く貧しい村の風景でした。
9位:FolleMente(狂おしいマインド)
ある男女の1晩の出来事を、それぞれの脳内を見える化したユニークな映画。
俳優のクラウディオ・サンタマリアも出演しており、実は私、クラウディオさんに2016年のイタリア映画祭でサインをいただいてちょこっとだけイタリア語で会話できた懐かしい思い出がありますのでとっても親しみを感じています💖💓💕
今年のイタリア映画祭ではこの作品が一番人気だったのでは?と感じたほど、多くの方が笑って楽しんでいて、感想を言い合う声もにぎやかでした。
私としては9位になってしまいましたが、それでも面白い映画だと思います。
10位:Nonostante(にもかかわらず)
監督兼主演のヴァレリオ・マスタンドレアさんは舞台挨拶でもチャーミングで素敵でした。
意識不明状態の人々が異次元のような状態で暮らしているストーリー。意識が戻ると、その間の記憶が消えてしまうため、主人公が過ごした時間を伝えようとする姿が描かれています。
意識が戻る(生還する)or死ぬかの二択しかない未来を待つ時間はどんなものでしょう?その間本人は自由に動けるものの、未来を変えるためには何もできないのです。
でもイタリア人らしいなあ〜と思ったのは、そんな状況でも恋をするんだね!とニンマリしちゃいました。
11位:Bestiari, erbari, lapidari(動物誌、植物誌、鉱物誌)
206分の長いドキュメンタリー。動物、植物、鉱物という三つの視点から、各地の風景や人々の営みが静かに映し出されます。
とても丁寧に時間をかけて撮影されていて、その場の空気や光、音まで大切に切り取っているのが印象的でした。作品を通して流れる“静けさ”や“時間の流れ”には独特の世界観があります。
それぞれのパートに込められた意味を感じとるには、観る側の集中力と余白のある心が必要なのかもしれません。私はまだこの作品の奥深さに届いていないのかも……。
共感が難しかったことに悔しい気持ちが残りました。